河竹会ブログ

お別れ

 私が両親以外に人生で影響を受けた人の一人に大学のある先生がいます。 
 失礼ながら大学の教授らしからぬ歯に衣着せぬ物言いで、 ストレートに言葉が心に届く一本気な方でした。
 私は この先生から 一生懸命やること あきらめないこと 礼儀をつくすこと 誰に対しても親切にすることを身をもって教えられました。 
 先生が最も嫌ったことは、 やりもしないのに あきらめること、 やってもダメだと社会や体制のせいにして 自らの努力を放棄することでした。 
 もし社会や体制が整わないなら、 国を動かせ! 政治家を使え! 枠組みを変えろ! 世の中を動かせ! そのために何からできるか?考えながら動け! 黙っていちゃいかん! 
 こういうことを 幾度となく聞かされました。 
 本当にがんばるという意味を教えてくれた方でした。 命を懸けて世の中のため人々のためになることを厭わない方でした。 
 専門は、 国際経済学。 特に発展途上国と言われるいわゆる貧しい国が 経済成長するために、 ODAをはじめとする金銭面の援助ではなく、 発展途上国の人々が豊かになる技術移転をすることによってその国の自助努力の一端を担うことが本当の援助だということを私が学生の頃から提唱された方です。 
 先生の理論には、 貧しいからというような 上から目線ではなく、 一緒にがんばって 豊かになりましょう~という深い愛があります。 
 その懐の大きさに たくさんの学生が 先生のもとに集まってきたのだと思います。 
 卒業生の中には、 今の日本を動かしている大企業や先端技術を扱う会社の社長がたくさんいます。 
 外国の大学の学長もいます。 
 キラ星のような人材を多数輩出された先生です。 
 
 みんな 先生の歩かれた後を一生懸命 追いかけて走っても走っても追いつくことができない偉大な存在でした。 
 その先生の訃報を 昨日受け取りました。 
 茫然自失。 
 心に穴が開いたように 寂しくて寂しくて たまりません。 
 最後にお会いしたのは、 2年前のことです。 
 先生は、 その時 もうすでにお話になることはできませんでした。 
 でも しっかりと私を見て 上がらない手を一生懸命動かそうとしてくださいました。 
 私だとわかってくださったと思っています。 
 お葬儀も一切執り行わないという 遺言だったそうです。 
 あまりにも 立派で、 残された者への心配りに ただただ平伏するばかりです。 
 お別れが現実にことだと思えず、 なんとなく心の整理がつかない思いです。
 しかし 先生が残してくださった言葉は、 これからもずっと 私の心の中で何度も何度も反芻されるでしょう。 
 私は 先生の足元にも及びませんが、 先生のように 力強くて 深い愛情をもって パワフルな行動力で身をもって教え子たちに 生きることを伝えていける 「先達」になれるよう 日々精進していきたいと 思います。 
 「生きること」のお手本が、 私にはたくさんいます。 
 心から敬愛する方ばかりです。 
 でも そんな方とのお別れは、 何か自分の一部をもぎ取られるように つらい気持ちです。 
 自分も年を重ねてきたためか、 そんな大事な方とのお別れが少しずつ 増えてきているように思えます。 
 寂しさや むなしさなんていう言葉では言えない 喪失感があります。 
 この世から 私がその方々のためにできることは、 ご冥福を祈ることだけです。 
 お世話になりました。 ありがとうございました。 という気持ちを込めて 合掌
 

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